糖尿病の指標となる血糖値とは?正常値や上昇する仕組みを解説
生活習慣病の一つである糖尿病は、血糖値が通常よりも高くなる病気です。
糖尿病にかかった場合は血糖値のコントロールが重要となり、放置すると失明や腎不全、足の切断につながる場合もあります。
そうならないためにも、日頃から血糖値の状態をチェックし、異変がある場合は早めに受診して治療を開始することが大切です。
この記事では、糖尿病の指標となる血糖値の概要や正常値、数値が上昇する仕組みを解説します。
血糖値とは
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度であり、低すぎると低血糖、高すぎると高血糖を引き起こします。
ここでは、血糖値についてさらに詳しく解説します。
血糖値とインスリンの関係
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの名称で血糖値を下げる働きがあります。
血液中に分泌されたインスリンは、筋肉や肝臓などの細胞表面にある受容体と呼ばれる部分に引っつき、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む仕組みです。
血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれることによって、血液中のブドウ糖が減少して血糖値が下がります。
なお、細胞に取り込まれたブドウ糖は細胞のエネルギー源となり、余ったブドウ糖は中性脂肪やグリコーゲンになります。
血液中のブドウ糖は、私たちが生きていくために欠かせないエネルギーのもとになる大切な成分です。
血糖値が高くなる仕組み
血糖値が高くなるのは、食べ物が消化されてつくられたブドウ糖が腸管から吸収されて血液中に入るためです。
血糖値は食事をしたあとに高くなりやすい特徴があり、時間とともにブドウ糖が細胞に取り込まれて減少していきます。なお、健康な人でも食後の血糖値は上昇するのが一般的です。
血糖値が低くなる仕組み
血糖値が低くなるのは、激しい運動や食事の量が少ないなどの理由で、血液中のブドウ糖が少なくなるためです。
血糖値は高いだけでなく低くても健康に影響を及ぼし、血糖値が正常値より低いことを低血糖といいます。
低血糖になると冷や汗や動悸、けいれん、手足の震えなどが生じる場合もあり、不安感や抑うつなど、精神的な面で影響を及ぼすケースもあります。
低血糖は糖分が足りてないことで起こるため、症状がみられる場合はブドウ糖やブドウ糖を含む清涼飲料水の摂取が必要です。
血糖値スパイクとは
血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇、急下降する現象のことです。
血糖値のグラフを見たときに、突出したスパイクのような変化を引き起こすことから、血糖値スパイクと呼ばれています。
血糖値スパイクを引き起こす原因は、血糖値を調整するためのインスリンの分泌が正常に行われないためです。
老化や肥満によってインスリンを分泌する膵臓の機能が低下すると、適切な量のインスリンを分泌できない場合や分泌のタイミングが遅れることもあります。
血糖値スパイクの症状として、眠気やだるさ、頭痛などの症状があり、他にも血糖値の乱高下が血管にダメージを与える原因とされています。
また、血糖値スパイクはインスリンの働きに問題が生じている場合も多く、放置していると糖尿病につながる可能性もあるため注意が必要です。
糖尿病と血糖値の関係
生活習慣病の一つでもある糖尿病は、血糖値が上昇することで引き起こされる病気です。ここでは、糖尿病と血糖値の関係を解説します。
糖尿病は血糖値が高くなる病気
糖尿病とは、インスリンが十分に働かないことで、血液中を流れるブドウ糖が増え、高血糖の状態になることです。
糖尿病には1型と2型、それ以外の原因によっておこるものがあり、一般的に生活習慣が原因で引き起こされるのは2型とされています。
2型糖尿病は食生活や運動習慣、ストレスなど、生活習慣の乱れによりインスリンの働きが低下し、ブドウ糖の利用が高まらずに血糖値が上昇します。
1型糖尿病は膵臓のインスリンを分泌する細胞が壊れてしまう病態で、インスリンそのものが分泌されずに血糖値が上昇します。
若い年代の方を中心に幅広い年齢で発症し、1型糖尿病にかかった場合は注射でインスリンを補う治療が必要となります。
血糖値が高くなる原因
血糖値が高くなる原因は、食べすぎや飲みすぎによる過大なカロリー摂取や、運動不足、ストレスなどです。
過食や運動不足が続くと、エネルギーとして使われない栄養素は脂肪が体内に蓄えられ、この脂肪が臓器でのインスリンの働きを弱めます。
その結果、血糖値を上昇させてしまいますが、それでも膵臓は血糖値を下げるためにインスリンを分泌し続けるのです。
インスリンによって糖分が脂肪として蓄積されていくため、肥満も助長させてしまいます。
このような状態が続いていると、インスリンを分泌しているベータ細胞はオーバーワークとなってしまい、インスリンが上手く働かなくなって糖尿病になるのです。
血糖値が高くなると現れる症状
糖尿病の中でも2型糖尿病は少しずつ進行するため、初期の段階では自覚症状がまったく現れないことも多いです。
ただし、糖尿病が進行して高血糖の状態が続くと以下の症状が現れてきます。
- 疲労感
- 体重が減る
- のどの渇きがひどい
疲労感が起こるのは、インスリンが上手く働かないことで血液中のブドウ糖を使えなくなり、エネルギー不足になるためです。
また、エネルギー不足になると筋肉や脂肪でエネルギーを補填するため体重が減少する場合があります。
のどの渇きがひどくなるのは、血糖値が高くなると血液がドロドロになるため、これを解消するために身体が水分を欲するためです。
一方、1型糖尿病の場合は急激に進行する場合が多く、症状もいきなり出てくる場合があります。疲労感や体重減少、のどの渇き以外にも、吐き気や嘔吐、風邪症状が現れることもあるため、早期に医療機関を受診しましょう。
血糖値が高いリスク
糖尿病が怖い病気といわれるのは、血糖値が高い状態を放置すると、重たい合併症を引き起こすためです。
糖尿病にかかると以下の三大合併症のリスクが高まります。
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
糖尿病網膜症は、高血糖によって網膜の血管が損傷を受け、変形したり、詰まったりして網膜剥離を引き起こし失明に至る可能性があります。
糖尿病腎症は、高血糖によって腎臓の機能が低下して腎不全に陥り、進行すると腎臓の機能を代行するための透析療法が必要になることもあります。
糖尿病性神経障害は、高血糖によって神経障害が発生し、足の傷口に気付かずに感染を起こしてしまい、適切な処置を取らないと壊死して最終的には足の切断を行う場合もあります。
血糖値が高い状態を放置すると重大な合併症を引き起こすため、初期の段階で治療を開始することが大切です。
糖尿病と血糖値の目安
糖尿病の判断には血糖値が用いられますが、血糖値は食事のタイミングによって異なるため、食前と食事では基準となる数値が異なります。
ここでは、血糖値の数字と糖尿病の目安を紹介します。
血糖値の数値
一般的に血糖値と呼ばれるのは、血糖値に含まれるブドウ糖の量を示すもので、単位はmg/dlです。
例えば、血糖値が100mg/dlの場合だと、血液1dlあたり100mgのブドウ糖が含まれている計算になります。血糖値は常に変化しているため、測る際のタイミングが重要です。
食前血糖値
食前血糖値は10時間食事を摂らない空腹時の血糖値のことで、血液中のブドウ糖が低いタイミングであり、糖尿病の診断や治療評価に用いられます。
空腹時に血糖値が高いということは、インスリンが上手く機能しておらず、血液中にブドウ糖が残ったままの状態を意味します。
糖尿病との関係は、食前血糖値が110mg/dlで境界型、126mg/dl以上で糖尿病型です。境界型とは糖尿病予備軍のことで、放置していると糖尿病になる可能性が高い状態にあります。
食前血糖値の平均的な数値は80~90mg/dlで、40歳以上を対象とする特定検診においては100mg/dlが特定保健指導の対象です。
食後血糖値
食後1時間半から2時間が血糖高値になりやすく、食前血糖値が良好でも食後血糖値が悪い場合は注意しましょう。
食後血糖値が重要になる理由は、糖尿病予備軍や糖尿病の初期の人では、食前血糖値が正常域を示す場合があるためです。
そのため、食前血糖値だけで糖尿病を判断すると食後高血糖を見逃すリスクがあります。
食後の血糖値が高いのはインスリンの量や働きが低下し、血液中のブドウ糖を処理できず、血糖値を戻す働きが弱い耐糖能異常の状態です。
放っておくと糖尿病になるだけでなく、動脈硬化を引き起こすリスクもあるため、食前血糖値も合わせて管理を行う必要があります。
食後血糖値の数値は140mg/dlを下回っていれば正常で、それ以上だと食後高血糖とみなされます。
糖尿病の検査方法
糖尿病の検査方法として、血糖値以外にもHbA1c、75g経口ブドウ糖負荷試験、尿検査などが用いられます。
ここでは、それぞれの検査方法を解説します。
HbA1c
HbA1cは、血液中のヘモグロビンのうちブドウ糖と結合しているものの割合を測定した値です。
ヘモグロビンとブドウ糖は一度結合すると離れず、赤血球は120日ほど生存できるため、採血から1~2ヵ月の血糖値の平均が確認できます。
血糖値は測るタイミングによって大きな数値の差が出やすいため、平均的な血糖の状態を調べるために診断にも取り組まれる数値です。
HbA1cは通常5%台前半で、5%台後半から高めです。糖尿病の可能性が高いのは6.5%以上です。
なお、HbA1cが7.0%以上になると合併症が進みやすい状態であり、放っておくと重篤な症状を引き起こすリスクがあります。
75g経口ブドウ糖負荷試験
血糖値やHbA1cの数値から糖尿病が疑われる場合は、75g経口ブドウ糖負荷試験が行われることがあります。
この検査は血糖値を正常に保つ能力があるかどうかを調べる検査で、インスリン分泌反応を調べることが目的です。
糖尿病の診断には必須でないものの、糖尿病が疑われる場合などに行われることがあります。
検査の流れは、75gのブドウ糖液を飲み、その後の血糖値の変動やインスリンを測定し、膵臓からのインスリン分泌が少ないかや効きが悪いかの判断をします。
尿検査
糖尿病の検査では尿検査も行われます。
本来であれば尿に糖が混じることはありませんが、糖尿病になると尿に糖が混じるため、尿検査で糖の有無を調べる必要があります。
尿に糖が漏れ出すのは血糖値が160-180mg/dl以上になってからであり、尿検査で糖が確認される場合は、それ以上の高血糖である可能性があり、糖尿病の早期発見につながるケースもあります。
また尿蛋白が複数回検出される場合は、糖尿病性腎症によるものの可能性もあります。
健康診断で尿糖・尿蛋白が出ている場合は、早めに医療機関に受診して詳しく調べてもらいましょう。
まとめ
この記事では、糖尿病の指標となる血糖値の概要や正常値、上昇する仕組みを解説しました。
糖尿病は過食や運動不足、生活習慣の乱れによってインスリンの分泌や効きが悪くなり、血糖値が高くなる病気です。
初期症状は少ないものの、進行すると重篤な合併症を引き起こし、失明や透析、足の切断に至る場合もあります。
糖尿病の発症や進行を防ぐためにも、自身の血糖値を把握し、健康診断の数値が悪い場合や気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
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