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糖尿病

糖尿病とは

血糖値を下げる作用があり、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用不足によって慢性的に高血糖となる疾患が糖尿病です。簡単に言うと、インスリンの分泌が悪くなるか、効きが悪くなるかということです。ただし実際には一方だけが原因ということは少なく、どちらも併存することが多いです。

また、糖尿病というと1型糖尿病、2型糖尿病の2病型が有名ですが、その他にも膵臓や肝臓の疾患、ホルモンの異常、薬剤の副作用に引き起こされる糖尿病、妊娠糖尿病など、1型でも2型でもない病型もあります。つまり糖尿病と一言に言っても、なぜ糖尿病になってしまったのかが違うため、全身の状態を正確に把握することが正しい治療法の選択に繋がります。

なぜ糖尿病を治療するのか

血糖値が著しく高くなると、のどが渇く、尿が増える、だるい、体重が減るなどの症状が出ますが、少しくらい高くても自覚症状はありません。症状がなくて困らないのになぜ治療した方がよいのか、それは血糖値が高い状態が続くと身体の大小の血管の障害が進み、様々な合併症を引き起こすからです。

小さい(細い)血管の障害=細小血管症

覚え方は、後述の1文字ずつを取り「し・め・じ」です。
具体的には以下の通りです。

  • 神経障害(し)・・・両手足のしびれ、痛み、感覚低下、めまい、便秘、下痢、勃起障害、脈が速くなる
  • 網膜症(め)・・・視力低下、視え方の異常
  • 腎症(じ) ・・・むくみ、倦怠感

いずれも初期には自覚症状がありませんが、徐々に、もしくは突然症状が出現し、その時点では合併症は進行しています。つまり、症状がなくても合併症が起こっていないとは言えず、検査が必要です。合併症が進行すると、足壊疽、失明、人工透析につながる可能性があります。腎機能は採血・採尿検査を行い当院で確認しますが、網膜症は内科での対応ではなく眼科を受診していただくこととなります。

 

大きい(太い)血管の障害=大血管症

覚え方は、後述の1文字ずつを取り「え・の・き」です。
具体的には以下の通りです。

  • 足壊疽(え)・・・胼胝(たこ)や傷が感染し治りにくくなる
  • 脳血管障害(の)・・・脳梗塞、脳出血を起こして、麻痺や呂律が回らない、頭痛、意識障害などの症状
  • 虚血性心疾患 (き)・・・狭心症、心筋梗塞を起こして、胸痛、息苦しさ、時には突然死の原因ともなる

 

 

 

 

 

足壊疽は切断が必要となることもありますし、脳血管障害や虚血性心疾患は致命的なことが多く、すぐに治療が必要となります。細小血管症も大血管症も発症すると、後遺症により生活の制限が増えていってしまうことが多いため、発症、進行を阻止して、糖尿病のない人と変わらない生活を送り、健康寿命を延ばすことが糖尿病治療の目標です。

当院で可能な動脈硬化の評価方法としては、頚動脈エコーと血圧脈波測定となっております。

 

 

糖尿病の治療目標

糖尿病の状態を判断するときに使われる指標として、代表的なものにHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)があります。1、2か月の血糖値の平均を反映するもので、健康診断などでもよく使われています。
この値を、とにかく糖尿病でない方と同じ値に近づければ近づけるほどいい(下げれば下げるほどいい)とされていた時代もありました。しかし様々な研究からそうではないことが証明され、現在はHbA1cをどのように下げるかに重点が置かれています。また、目標値も患者様ごとに違ってきます。

              

ただし、HbA1cが正確に反映されない病態、体質の方もいらっしゃいます。例えば貧血、肝臓の疾患、異常ヘモグロビン症などの方です。そうすると実際よりも過小評価、過大評価されてしまうため不十分な治療、不必要な治療となってしまうこともあります。そのため、当院では血糖値とHbA1cに乖離が見られた場合には別の指標を使って評価していきます。

糖尿病の治療法

糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法、いわゆる生活習慣に気を付けるということです。食事だけ気を付けてあまり動かない、もしくはたくさん動くから食事には気をつけなくてよいというものではなく、どちらも大事になってきます。この両者で血糖値の目標を達成できていれば薬物療法は必ずしも必要ありません。また薬物療法を行っていても、うまく生活習慣が改善できれば薬物の必要量を減らすことも可能です。

 

年齢、性別、仕事や趣味、食べ物の好き嫌いなどは千差万別であり、一人として同じライフスタイルの人はいないため、万人に適している生活習慣というものはありません。そしてすべてに通じて言えることですが、高すぎる目標や現在とは違いすぎる変化は長続きしないことが多いため、持続可能な現実的な目標を決めることが大事です。お一人お一人にあった生活習慣を見つけるお手伝いをさせていただきます。ただし、目指す生活習慣を完全に達成することは難しいことも事実です。その場合には薬物療法が必要になってきます。

食事療法

食事療法は以前よりカロリー制限がメインとされてきています。それとは別に炭水化物制限も昨今取りざたされています。糖尿病をお持ちでない方も暴飲暴食は避けるべきですので、そういった意味では摂取カロリーに気を付ける必要はありますが、併存する疾患や年齢によっては、過度なカロリー制限食は逆効果となります。また適度な炭水化物制限は体重減少や血糖の改善を期待することができますが、こちらもやり方を間違えると腎機能の悪化や脂質異常症の増悪につながることもあります。

腎機能が悪い方には蛋白質制限を行いますが、動物性蛋白質と植物性蛋白質を同列に扱うことはできません。むしろ腎機能が悪くても高齢者であれば筋肉量低下のリスクを減らすために、少し蛋白質を多めに取ることも検討されます。

運動療法

運動療法には、食後に動いたことによる血糖値低下などが期待できる急性効果と、長期間継続することにより、運動していないときでも血糖値が上がりにくくなる慢性効果があります。効果的な運動を週3回以上、中2日を明けずに行うことが望ましいとされています。そうは言ってもなかなか運動に時間を割くことが出来ない方も多いと思いますので、目的地の一駅手前で降りて歩く、速足で歩く、なるべく階段を使うといった、生活に運動を組み込むこと(非運動性熱産生)もお勧めです。

しかし、運動療法を制限した方がよい、もしくは行わない方がいい病態の方もいらっしゃいます。また運動療法を行うのに適した時間帯、避けた方がよい時間帯もあります。お身体の状態にあった運動内容、ライフスタイルにあったタイミングで行うことが大切です。

薬物療法

食事療法や運動療法を十分に行っても血糖値が目標に達しない場合や、緊急性の高い状態の場合に薬物療法を行います。薬物療法は血糖値を下げるという目的は同じですが、血糖の下げ方のアプローチが違います。そのため、使用が望ましい方や使用しない方がいい方、血糖値を下げる以外のメリットが期待できる薬剤、起こりうる副作用、ライフスタイルに合っているかなどをすべて考慮した上で治療法を選択していくことになります。

αグルコシダーゼ阻害薬

腸管での炭水化物の吸収分解を遅くして食後血糖の上昇を抑制する

2型糖尿病の方のみならず、1型糖尿病の方も内服ができる

SGLT2阻害薬

腎臓でのブドウ糖の再吸収を抑えて、尿へのブドウ糖の排泄を促す

2型糖尿病の方のみならず、1型糖尿病の方も内服ができる

心臓や腎臓を守る効果が期待出来る

体重減少作用がある

チアゾリジン薬

筋肉や肝臓でのインスリンの効きをよくする

善玉コレステロールを上げ、中性脂肪を下げる効果がある

ビグアナイド薬

肝臓での糖産生を抑えて、インスリンの効きをよくする

肥満の2型糖尿病の方の脳卒中や心筋梗塞の発症を抑える効果がある

イメグリミン

血糖が高いときだけインスリン分泌を促し、またインスリンの効きもよくする

糖尿病の内服薬の中では一番新しい薬剤

DPP-4阻害薬

血糖が高いときだけインスリン分泌を促し、血糖を上げる作用のあるグルカゴンの分泌を抑える

GLP-1受容体作動薬

内服薬と注射薬(毎日打つもの、もしくは週一回打つもの)があり、血糖が高いときだけインスリン分泌を促し、血糖を上げる作用のあるグルカゴンの分泌を抑え、DPP-4阻害薬よりも効果は強い

心臓や腎臓を守る効果が期待出来る

体重減少作用がある

スルホニル尿素薬

インスリン分泌を促す

効果は強いが、他剤よりも低血糖に注意しなくてはならない

グリニド薬

スルホニル尿素薬よりも早く、また短時間のインスリン分泌を促すため食後高血糖の改善が期待できる

他剤よりも低血糖に注意しなくてはならない

インスリン製剤

速効型と持効型があり、インスリン分泌が落ちている方や内服薬では下がりきらない方が対象となる

 

ここからは以下に、実際に診療をしていてよく受ける質問を一部抜粋したいと思います。

 

Q:糖尿病は治りますか?

A:残念ながら完治することはありません。
しかし治療により良い状態をキープしていくことで、糖尿病ではない方に近い状態にすることはできます。
ここでいう治療は薬剤による治療だけを指すわけではなく、食事・運動療法も含まれます。
実際に、インスリン注射や内服薬を使用していた方が、食事・運動療法を実践することにより薬剤を減量や中止できている方もいらっしゃいます。

Q:インスリン注射を始めたら一生続けなくてはいけないのですか?

A:続けなくてはいけない方もいらっしゃいますが、やめることができる方もいらっしゃいます。
状態を見ながら判断をしていくことになります。

Q:注射というと、毎日打たなくてはいけないのですか?

A:インスリン注射の場合は毎日打ちますが、今はインスリンでない注射製剤(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP1受容体作動薬)もあり、その適応の方であれば週に1回ですむこともあります。

Q:血糖が高いので痩せなくていけないと言われてがんばっているのですが、なかなか体重を落とせません。それでもまだ落とさなければいけませんか?

A:たしかに肥満は血糖値のみならず、血圧やコレステロールなどに悪影響を及ぼします。
ただし、年齢や骨格により至適な体重が異なりますし、むしろ今以上には体重を落とさない方がいい場合もあります。
間食を完全にやめたり、厳しい食事制限をすることがストレスになり、食の楽しみがなくなってしまっては治療の継続も難しくなります。
相談しながら目標を決めていきましょう。

Q:体重が落ちた、もしくは変わっていないのに思ったより採血結果がよくありませんでした。どうしてですか?

A:このご質問は、特にコロナ禍以降でよくありました。
おそらく外出頻度が減り、運動量が減ったことが筋肉量の減少、内臓脂肪の増加につながり、体重としてはそこまで変わっていなくても、採血結果として思わしくない結果となっている可能性があります。
また極端な食事制限なども同様な結果となることがあります。

Q:早食いはだめですよね?野菜から食べることが大事なんですよね?

その通りで、早食いは食後血糖の上昇を招きますし、野菜から食べることで血糖の上昇を緩やかにすることが出来ます。

しかし高齢の方では食事量が少なくなり、筋肉量の低下につながることが問題となります。ゆっくり食べたり野菜から食べることでお腹が満たされてしまうことで、炭水化物や蛋白質の摂取量の低下につながり、食事量の減少を助長することもあるため、場合によっては血糖の上昇を考慮しつつ食べ方や順番について必ずしも早食いがだめ、野菜から食べないといけないとは言い切れません。

その他
  • HbA1cの目標値はどのくらいですか?
  • 体重の目標はどのくらいですか?
  • 運動がなかなかできないけれども、どうすればいいですか?
  • 今飲んでいる薬の量をもっと減らせませんか?

などなど、これ以外にも色々ご質問があると思いますが、その都度お話しさせていただければと思います。

以下に当てはまる方はご相談ください

空腹時血糖値 110 mg/dL以上
随時血糖値 140 mg/dL以上
HbA1c 6.0 %以上

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