糖尿病の原因は?症状がある場合の対処法を解説
糖尿病はインスリンと呼ばれるホルモンが不足したり、効きが悪くなることで高血糖になる病気です。
糖尿という名前がついているように、糖尿病を発症すると体内の糖を一定に保とうとする体の働きにより、尿に糖が混じります。
糖尿病は肥満や不規則な生活など生活習慣が原因で起こる病気と思われがちですが、糖尿病の種類によって発症原因は異なります。
糖尿病の予防や治療のためにも、原因や対処法を知っておきましょう。この記事では、糖尿病の原因やメカニズム、症状が見られる場合の対処法を紹介します。
糖尿病の原因とメカニズム
糖尿病が大きく関係しているのは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンです。ここでは、糖尿病の原因とメカニズムを紹介します。
糖尿病のメカニズム
糖尿病はインスリンが効きにくい体になったり、分泌する力が弱くなったりすることで起こる病気です。
インスリンは膵臓細胞で作られるホルモンで、食事で血液中のブドウ糖が増えると、筋肉などに送ってエネルギーとして利用する働きがあります。
血液中に含まれるブドウ糖の濃度を血糖値といい、インスリンの作用によって血糖値は正常に保たれています。
しかし、何からかの原因でインスリンの効果が低下すると、血糖値は上がり続けてしまい、糖尿病になってしまうのです。
まずは、どのような過程を経て糖尿病になるかを知っておきましょう。
インスリンが効きにくい体になる
何らかの原因でインスリンが効きにくい体になってしまうと、血糖値を下げることができず、糖尿病になります。
インスリンが効きにくくなることをインスリン抵抗性と呼び、インスリンが十分に分泌されていても血糖値が下がりません。
インスリン抵抗性があると筋肉や脂肪組織の糖取り込み機能が低下し、さらに多くのインスリンを分泌しようとするため、膵臓にも負担がかかります。
インスリンを出す力が弱い
インスリン抵抗性がなくても、インスリンそのものが分泌されないと血糖値が上昇して糖尿病を発症します。
インスリンを出す力が弱くなるのは主に膵臓の機能低下であり、その原因は加齢や生活習慣、遺伝などさまざまです。
また、日本人はもともとインスリンを分泌する力が弱いといわれており、高血糖の状態が続くと膵臓が疲労し、インスリンを分泌する力はさらに低下します。
なお、糖尿病と診断されないまでも、糖尿予備軍や境界型糖尿病が疑われる場合は、インスリンを出す力が弱くなっている可能性が高いです。
1型糖尿病
1型糖尿病は、膵臓のインスリンを出す細胞が壊されることでインスリンが分泌されなくなり、高血糖になる病気です。
細胞が壊れる原因ははっきりしていませんが、免疫機能が正しく働かなくなることで、自分の細胞を壊してしまうと考えられています。
また、一般的に1型糖尿病は進行性であり、病気が進んでいくとインスリンが出せないため、人工的にインスリンを補わなければなりません。
また、1型糖尿病は進行速度の違いから以下の3パターンにわけられます。
- 劇症1型糖尿病
- 急性発症1型糖尿病
- 緩徐進行1型糖尿病
劇症1型糖尿病はもっとも急激に発症し、早ければ1週間程度でインスリンを補充する治療が必要です。
また、急性発症1型糖尿病は発症から数ヶ月でインスリンを補充する治療が必要となり、もっとも頻度の多い典型的なタイプとなります。
緩徐進行1型糖尿病は、発症してから半年〜1年かけて徐々にインスリン分泌が低下するタイプで、他に比べると症状の発現が緩やかです。
2型糖尿病
2型糖尿病は生活習慣の乱れや遺伝などにより、インスリンが効きにくくなったり、分泌が低下したりする病気です。
すべての2型糖尿病患者に生活習慣の問題があるわけではないものの、血糖値をコントロールするためには食生活や運動習慣の見直しが必要となります。
また、1型糖尿病は全世代で発症する(若者に多い)のに対し、2型糖尿病は中高年に多く、緩やかに進行しやすいのも特徴です。
ちなみに、1型糖尿病だと人工的にインスリンを補って治療しますが、2型糖尿病は食事療法や運動療法、飲み薬で治療するケースが多いという違いもあります。
糖尿病を引き起こす主な原因
糖尿病の中でも、特に2型糖尿病は生活習慣が原因で発症しやすい特徴があり、生活習慣病の一つに数えられます。
ここでは、糖尿病を引き起こす主な原因を紹介します。
遺伝
2型糖尿病の発症には遺伝的要素が影響するといわれており、親が糖尿病だと子どもが発症する確率は高くなります。
ただし、病気そのものが遺伝するのではなく、インスリンの分泌が低下したり、インスリン抵抗性を起こしやすいなどの体質が遺伝します。
そのため、糖尿病になりやすい体質を受け継いだとしても、生活習慣に気をつけていれば発症する確率は低くなるでしょう。
過食と多飲
血糖値の上がりやすい食品や飲料を摂りすぎることで、インスリンの働きが追いつかなくなり糖尿病になるケースがあります。
糖質が多く含まれている食品や飲料は以下が挙げられます。
- 菓子パン、ご飯
- 洋菓子
- 和菓子
- 清涼飲料水
- 果物
また、脂質も摂りすぎることで体脂肪が増え、インスリンが効きにくい身体になり、糖尿病を発症する場合もあるため注意が必要です。
肥満
糖尿病を引き起こす原因として、肥満が挙げられます。
その理由は、過食や多飲があるとエネルギーとして使われなかったカロリーが脂肪となり、インスリンの働きが鈍くなって血糖値が高まるためです。
インスリン抵抗性が高まると大量のインスリンが必要な状況となり、やがて膵臓は疲弊し、インスリンの分泌低下につながります。
肥満の中でも内臓の周囲に脂肪が蓄積する内蔵脂肪型肥満は、特に糖尿病のリスクが高まるため要注意です。
運動不足
運動不足も糖尿病を引き起こす原因の一つです。
運動不足になると身体の中から分泌されるインスリンが効きにくくなり、血糖値が下がりにくくなります。
そのため、糖尿病治療で運動療法があるように、適度な運動は極めて重要です。
運動をして筋肉への血流が増えるとブドウ糖は細胞の中に取り込まれやすくなり、インスリンの効果が高まって血糖値の低下を促します。
ただし、強度の高い運動は体が動くために必要なエネルギーを供給しようとし、血糖値を上げるホルモンの分泌を増やすため注意が必要です。
糖尿病予防や治療のための運動は、ジョギングやスイミング等の有酸素運動がよいでしょう。
ストレス
ストレスを感じることも糖尿病を引き起こす原因となります。
その理由は、ストレスを感じると血糖値を上げるアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンが分泌されるためです。
また、ストレスを受け続けるとインスリンが効きにくくなってしまい、血糖値が下がりにくくなる作用もあります。
ストレスを溜めないためにも、リラックスする時間やしっかりと身体を休める時間を作ることが大切です。
睡眠不足
糖尿病を引き起こす原因の一つに睡眠不足が挙げられ、十分に眠れない状況が糖尿病のリスクを高めている可能性があります。
その理由は、睡眠不足や睡眠の質が低いことでインスリン抵抗性を増加させ、血糖値が下がりにくくなるためです。
また、不眠によって食欲を抑制するホルモンであるレプチンが減り、食欲を刺激するグレリンが増加して過食につながるケースもあります。
適切な睡眠環境を整えることは、糖尿病予防や管理において重要といえるでしょう。
喫煙
糖尿病のリスクを高める原因の一つに喫煙があり、国内外の多くの研究によって関連性が明らかになっています。
喫煙が糖尿病の原因になるのは、交感神経を刺激して血糖を上昇させたり、体内のインスリンの働きを妨げたりするためです。
また、喫煙者が禁煙をする際の注意点として、禁煙によって食事が増加し、糖尿病のリスクが高まるケースがあります。
禁煙をする場合も、過食や多飲にならないように注意しましょう。
加齢
生活習慣に変化がなくても、加齢が原因で糖尿病を発症するケースもあります。
なぜなら、老化によって運動機能や心臓機能が低下するように、インスリンを分泌している膵臓の機能も低下するためです。
また、血液中の糖分は運動することで筋肉に取り込まれるものの、加齢に伴って運動量も筋肉量も減ると血糖値が下がりにくくなります。
さらに、高齢になると糖尿病の症状が出ても老化現象だと思い込んでしまい、進行していても気づかないケースもあります。
糖尿病の症状と対処法
糖尿病は初期の段階では目立った症状がみられない場合も多く、発症していても気づかないケースがあります。
しかし、まったく症状がないわけではないため、どのような症状が出たら糖尿病が疑われるか知っておきましょう。
ここでは、糖尿病の症状と対処法を紹介します。
糖尿病の症状とは
糖尿病の症状として以下が挙げられます。
- のどが渇く
- 頻尿になる
- 疲れやすくなる
- 食べているのに体重が減る
のどの渇きや頻尿が起こるのは、高くなった血糖値を下げようと体が水分を多く欲したり、高血糖により尿の量が増えるためです。
また、体が上手く糖分を使えないため、エネルギー不足になることで疲れやすくなります。
食べているのに体重が減るのは、糖が使えない代わりに脂肪や筋肉をエネルギーとして使用するためです。
さらに、症状が進行すると合併症を引き起こし、目のかすみや手足のしびれ、足のむくみなども現れるようになります。
糖尿病の症状が見られる場合の対処法
糖尿病の症状が少しでも見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
糖尿病は初期症状がほとんどないため、症状が出た時点ですでにかなり進行している可能性もあります。
糖尿病は完治が難しい病気ではあるものの、早期から治療を行うことで普段と変わらない生活を送ることは可能です。
反対に、糖尿病の症状があるにも関わらず放置すると、進行して足を切断したり、透析が必要になったりするリスクもあります。
また、糖尿病でみられる症状の中には他の病気で起こる症状もあるため、受診によって病気を早期発見できる場合もあるでしょう。
無症状でも定期検診が大切
糖尿病を早期発見して進行を抑えるためには、無症状でも定期検診を受けて自身の身体の状態をこまめにチェックしましょう。
症状が出ていない場合でも早い段階で治療を開始することで、合併症を予防したり、薬に頼らない治療ができたりもします。
なお、会社などで行われる定期検診において、糖尿病の検査では空腹時血糖値とHbA1cを調べ、どちらかが基準を超えると医療機関を受診しなければなりません。
比較的変化が小さいタイミングで測定する血糖値が空腹時血糖値、赤血球中のヘモグロビンがどれくらいの割合で糖と結合しているかを示すのがHbA1cです。
一般的には空腹時血糖が100mg/dL、HbA1cが5.6%以上で糖尿病予備軍、空腹時血糖が126mg/dL、HbA1cが6.5%以上だと糖尿病と診断されます。
空腹時血糖値やHbA1cは一度の検査の数値だけを見るのではなく、推移を観察し、必要に応じて糖質コントロールも大切です。
まとめ
この記事では、糖尿病の原因や症状がある場合の対処法を解説しました。
糖尿病には1型と2型があり、1型は主に免疫機能が原因で発症するのに対し、2型は生活習慣や遺伝などで発症しやすい特徴があります。
糖尿病は初期症状が出にくいため、少しの変化に対しても敏感になり、気になる場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
はまゆり糖・生活習慣病クリニック溝の口は、10年以上にわたって、大学病院で糖尿病や脂質異常症、高血圧などの治療に従事してきた専門医が診察を行います。
外科治療で可能な方や、即入院が必要な重症の方の担当も行ってきた実績もあるため、安心してご相談ください。
また、当院ではHbA1c、血糖値、尿検査(定性)の検査結果が当日に分かるため、待つことなく結果に応じた治療をすぐに開始できます。
「糖尿病の症状かもしれない」「症状はないけど糖尿病が気になる」という方は、まずはお気軽にお問い合わせください。