甲状腺
甲状腺疾患
甲状腺は首にあり、長径3~5cmほどの蝶々のような形をしており、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは、簡単に言うと元気を出すホルモンで、なくてはならないものですが、これが分泌されすぎると甲状腺機能亢進症、分泌されなくなると甲状腺機能低下症となります。
甲状腺の病気は珍しいものではありませんが、治療をせずに放置すると心不全、不整脈、不妊、流産の原因にもなります。治療を行えば、甲状腺の病気ではない方と同じ生活を送ることができます。
当院では、採血で甲状腺機能の評価をし、また超音波(エコー)検査で腫瘍の有無や形態の評価を行い、診断、内科的治療につなげていきます。
甲状腺機能の異常を来す疾患
バセドウ病、橋本病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺腫瘍など
甲状腺機能亢進症の症状(心身ともに元気が出すぎる、代謝がよくなりすぎる)
- ドキドキする
- 息切れ
- 汗をかきやすい
- 手が震える
- 体重が落ちてくる
- イライラする
- 食欲が増す
- 下痢
- 首が腫れている
- 眼が飛び出ている
甲状腺機能低下症の症状(心身ともに元気が出ない、代謝が落ちる)
- やる気が出ない
- 寒がり
- 疲れやすい
- 記憶力が落ちる
- 脈が遅い
- 体重が増える
- 便秘
- 首が腫れている
- むくむ
バセドウ病
抗TSH受容体抗体という自己抗体(自分を攻撃してしまう抗体)が甲状腺を持続的に刺激した結果、甲状腺が全体的に腫れて多量の甲状腺が分泌されてしまい、甲状腺機能亢進症となる疾患です。
甲状腺が腫れる、脈が速くなる、眼球突出が特徴的な徴候ですが、これが揃わないこともあります。経過観察で改善することはなく、甲状腺ホルモンが過剰な状態が続くと意識障害や心不全、消化器症状(下痢・嘔吐)が出現し、命の危険性のある甲状腺クリーゼに至ることもあります。
治療は内服(内科的治療)が基本ですが、副作用により薬が使用できない方や、内服ではコントロールが難しい方は放射線治療や手術治療となります。ここで言う副作用で特に重要なものとして挙げられるのが、無顆粒球症(白血球が減る)と肝機能障害です。放置するといずれも重篤化するため、内服治療開始後の3か月は数週間おきに採血をして、副作用の確認をすることとなっています。
慢性甲状腺炎(橋本病)
甲状腺組織にリンパ球が浸潤する疾患で、抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体が検出されます。年月をかけて甲状腺細胞が壊されていき、約90%破壊されると甲状腺機能低下に至るとされています。
甲状腺の腫れが特徴的ですが、腫れが目立たないこともあります。また甲状腺機能低下に至っていない慢性甲状腺炎であれば自覚症状がまったくないこともありますが、時間経過とともに甲状腺機能低下になることがあるため、注意深い経過観察が必要です。
治療は、甲状腺機能が正常であれば治療の必要はなく経過観察のみですが、甲状腺機能低下になっていた場合は内服(内科的治療)によるホルモン補充療法が行われます。適正量の内服を継続することによりそれまでと変わらない日常生活を送ることができ、また甲状腺の腫れが引く場合もあります。
亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎
甲状腺に炎症が起こることで、大量の甲状腺ホルモンが放出される疾患です。
亜急性甲状腺炎の場合には風邪症状のあとから突然の甲状腺機能亢進による症状(動悸・発汗・脈が速くなる)と頚の腫れ、痛み、発熱などの症状が出ます。無痛性甲状腺炎の場合には通常は発熱や頚の痛みはなく、甲状腺機能亢進症による症状も軽度なことが多いです。
一見バセドウ病と似たような症状や採血結果となりますが、治療法が異なるためしっかりと診断をつけることが重要です。治療はステロイドや非ステロイド性抗炎症薬を使用したり、経過観察のみなどの内科的治療が基本となります。
甲状腺腫瘍
甲状腺腫瘍は珍しいものではなく、外見からはわからないものがほとんどです。良悪性を見極めるためには穿刺吸引細胞診が必要ですが、すべての腫瘍が対象となるわけではありません。超音波検査(エコー)を行い、一定の基準を満たした場合に穿刺吸引細胞診を行い、基準を満たさない場合には超音波検査(エコー)での定期的な経過観察を行います。当院では穿刺吸引細胞診の適応となった場合には、検査の可能な施設へご紹介させていただいております。